岡山マンション市況物語|第13話 内覧はあるのに、なぜ申込みが入らないのか?
2026.09.21
「何人も見に来ているのに、なぜ決まらないのでしょうか?」
岡山市内で売り出している中古マンションに、販売開始から一か月で5組の内覧がありました。
広告への問い合わせもあり、室内を見学する人もいます。
しかし、購入申込みは入りません。
売主様は不安そうに尋ねました。
「見に来る人はいるのに、なぜ決まらないのでしょうか。やはり価格を下げた方がよいですか?」
内覧につながっているということは、買主が価格や立地、間取りなどに一定の関心を持っているということです。
それでも申込みに至らない場合は、内覧したときに「購入を決め切れない理由」が見つかっている可能性があります。
買主は一つの物件だけを見ていない
マンションを購入する人の多くは、複数の物件を比較しています。
内覧後に見送られたからといって、その部屋が悪いとは限りません。
同じ価格帯に、より築年数が浅い物件があった。希望する学校区の物件が出てきた。駐車場を確保できるマンションが見つかった。
このように、ほかの物件との比較によって決まらないこともあります。
大切なのは、単に「見送りでした」で終わらせず、買主が何を比較し、どの条件で迷ったのかを確認することです。
内覧で見られている五つのポイント
買主は、広告では分からなかった部分を内覧で確認します。
1.室内の明るさと広さ
家具や荷物が多いと、実際より狭く感じられることがあります。
昼間でもカーテンが閉まり、照明がついていなければ、部屋全体が暗い印象になります。
内覧前にはカーテンを開け、照明をつけ、室内を明るく見せる準備が必要です。
2.においと清潔感
室内へ入った瞬間の印象は、その後の見学にも影響します。
生活臭、たばこ、ペット、水回りのにおいなどは、居住者が気付きにくいことがあります。
換気や清掃を行い、玄関、水回り、窓まわりを整えておくことが大切です。
3.収納の使いやすさ
買主は、収納の広さや数だけでなく、現在の荷物が収まりそうかを確認します。
収納の中が荷物でいっぱいになっていると、「収納が少ない部屋」という印象を持たれることがあります。
不要な物を減らし、収納の奥行きが分かる状態にしておくと、使い方をイメージしやすくなります。
4.設備や室内の状態
古くなったキッチンや浴室、小さな傷、建具の不具合なども確認されます。
すべてをリフォームする必要はありません。
ただし、簡単に修理できる不具合を放置すると、「ほかにも問題があるのではないか」という不安につながります。
修理しない場合は、状態を正確に説明し、必要に応じてリフォーム費用の目安を示す方法もあります。
5.駐車場と毎月の負担
岡山では、駐車場を確保できるかどうかが大きな判断材料になります。
また、管理費、修繕積立金、駐車場使用料を含めた毎月の負担も比較されます。
売買価格が予算内でも、月々の支払いが想定より高ければ、購入を見送られることがあります。
居住中の内覧では、売主様の対応も大切
居住中のマンションでは、売主様にも内覧へご協力いただくことがあります。
丁寧に対応することは大切ですが、買主の後をついて詳しく説明し続けると、落ち着いて室内を確認できない場合があります。
反対に、質問へ答えにくい雰囲気でも、買主は不安を残したまま帰ることになります。
物件の説明は基本的に担当者へ任せ、売主様にしか分からない生活上の魅力を尋ねられたときにお答えいただく形が自然です。
「朝はこの部屋に日が入ります」「スーパーまで歩いて行けます」など、実際に暮らした人の言葉は、買主に生活を想像してもらう助けになります。
内覧後の感想を集める
申込みにつながらなかったときは、担当者が買主や案内した不動産会社へ感想を確認します。
- 室内の印象はどうだったか
- 価格をどう感じたか
- ほかにどの物件と比較しているか
- 購入を見送った最大の理由は何か
- 条件が変われば再検討できるか
一組の感想だけで判断する必要はありません。
しかし、複数の買主から「室内が暗い」「駐車場がない」「価格が高い」など、同じ意見が続く場合は、改善すべき課題が見えてきます。
すぐに価格を下げるべきとは限らない
内覧後に申込みが入らないと、すぐに値下げを考えたくなります。
しかし、原因が室内の片付けや清掃、説明不足であれば、価格を下げる前に改善できます。
まずは、次の点を見直します。
- 荷物を減らし、広さを伝えられる状態にする
- 清掃、換気、照明を徹底する
- 小さな不具合を修理する
- 駐車場や管理状況の資料をそろえる
- リフォーム費用の目安を用意する
- 買主から出た質問を広告や資料へ反映する
これらを改善しても同じ理由で見送られる場合は、価格と条件のバランスを見直す必要があります。
5組の内覧から分かったこと
最初にご紹介したマンションでは、内覧後の感想を整理しました。
5組のうち3組から、
「立地はよいが、室内の古さを考えると価格が少し高い」
という意見がありました。
売主様と相談し、まずはハウスクリーニングと一部補修を行いました。さらに、買主が判断しやすいように、リフォームの参考見積りも用意しました。
そのうえで、周辺の競合物件と比較し、売出価格を見直しました。
次の内覧では、室内の印象と購入後に必要な費用が分かりやすくなり、買主から申込みが入りました。
単に価格を下げたから決まったのではありません。
買主が不安に感じていた点を一つずつ整理し、購入を判断できる状態にしたことが成約につながったのです。
内覧は、市場から届く具体的な答え
内覧があるのに申込みが入らないことは、失敗ではありません。
買主が実際に部屋を見たからこそ、広告だけでは分からなかった課題が見えてきます。
大切なのは、
「なぜ買わなかったのか」
を感覚で決めつけず、内覧後の感想から確認することです。
価格なのか、室内の印象なのか、駐車場なのか、毎月の負担なのか。
理由を見極め、改善できることから対応する。
内覧とは、部屋を見てもらう場であると同時に、そのマンションが買主からどのように評価されているかを知る大切な機会なのです。
次回予告
第14話
「購入申込みが入ったら、価格交渉に応じるべきか?」
購入希望者から提示された価格に、どこまで応じるべきなのか。金額だけでなく、住宅ローン、引渡し時期なども含めた申込み条件の見方について考えます。


